概略
初の国産アニメが作られてから、100年余り。現在、海外でも人気が高く、関連産業も好調だ。本書は、今や日本を代表するポップカルチャーとなったアニメの通史である。1917年の国産第1作に始まり、テレビでの毎週放送を定着させた『鉄腕アトム』、監督の作家性を知らしめた『風の谷のナウシカ』、深夜枠作品を増大させた『新世紀エヴァンゲリオン』など、画期となった名作の数々を取り上げ、その歴史と現在を描く。
(カバーのそで(※表紙の内側に折り込む部分)より引用) ※なお漢数字は英数字に改めた。
はじめに
ついに、日本アニメの通史を概略的に学べる一冊が登場した。しかも安価な新書で!
本書のあとがきにもあるように、作品史・監督史観が中心となっているが、さほどマニアックな話題に立ち入らずに技術や制作にも触れられているため、非常にバランスの良い印象だった。
また、今で言うテレビアニメの枠組みを作った『鉄腕アトム』がどうしても目立ってしまうなかで、それ以前の日本の状況にも言及しており、大変興味深かった。文献や資料が少ない中で、取材を重ねられており、日本アニメの概略を知るには良い入門書だと思った。
テレビ放送という大転換
やはり、画期的だったのは毎週決まった時間に約30分のテレビアニメの登場である。アニメを作るのは多大な労力を費やすにもかかわらず、質の高い作品を毎週作り上げた衝撃は大きかったようだ。
最初のテレビアニメ(※ここでは毎週放送という形式のもの)からほどなくして、ほぼ全ての「ジャンル」が出そろったというのは、非常に興味深かった。
特に「魔法少女もの」は日本だからこそ成立したものだという指摘は面白かった。キリスト教が文化の基礎にある西洋では、反社会的とされる魔女を連想させるから成立しなかっただろうとのこと。
「ロボットもの」も人間味を帯びた形で作られているのが特徴的だ。個人的には、一種のキャラクターとして感じるので、単なる機械としては見れないのも、アニメの影響なのかなと思った。
監督の発見
監督に注目が集まるようになったのにも、アニメが作られるようになってから、だいぶ時間がたってからのことである。アニメファン以外の一般人に監督が知られるようになるのは、1984年の宮崎駿『風の谷のナウシカ』を待たなければならかった。
また、庵野秀明による『新世紀エヴァンゲリオン』は20年以上コンテンツを生み出す驚異的な作品となった。ストーリー性はもちろんのこと、新たなビジネスモデルや「深夜アニメ」の誕生に寄与するなど多くの影響を与えた。
技術進化による新たな個性
PCや情報技術の発展により、今までと違うタイプの監督が出現した。
以前であれば長い下積みを経験してからでないと監督にはなれなかった。しかし、情報技術の発展により自主制作でもアニメを制作できるようになったのである。その代表が『君の名は。』で知られる新海誠である。
新たな技術によって、これからますます多様なアニメが作られるようになるだろう。
おわりに
日本のアニメは独特の進化を遂げ、世界中で愛されている。
アニメは単なる娯楽という側面のみならず、アニメ特有の芸術性が少なからずあるはずである。
近い将来、アニメは映画のように一般教養として扱われるようになるだろう。
日本というアニメ大国に生まれた以上、その歴史を学ぶことの意義は大きいはずである。
まぁ、深く考えず楽しめればそれでいいんですけどね。知ってれば、なお面白くなるから読むだけです。