【読書案内】中学生と一緒に向き合う複雑・多様な世界ーブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』感想

文学

元底辺中学校への入学

この本は、イギリス在住の日本人女性が、元底辺中学校に通う息子さんの周辺で起きた出来事を、エッセイ風にまとめたものです。

物語はその息子さんが元底辺中学校に入学するところから始まります。

子供達の自主性を尊重し、底辺からの脱却しつつある中学校ですが、なお貧困や格差に苦しむ子供達もいます。

学校は社会の縮図とは良くいったもので、中学生が時には衝突しながら互いを知る姿に、社会の複雑さ・相互理解の難しさなど考えさせられました。

少数派へのまなざし

著者が住んでいる都市部でも「どこに住んでいるか」によって、すでに格差が生まれてしまっているとのこと。

著者はイギリスで保育関係の仕事をしていたことがあり、そこでも貧困や暴力などで苦しむ子供達と接する機会があったそうです。

そうしたなかで育ったからなのか、息子さんも自分と異なる立場の人を理解しようとする姿勢が感じられました。

朱に交われば…

印象に残っているのは、水泳大会で優雅に泳ぐ少女。

実は、著者が保育関係の勤め先で預かっていた少女だったのです。

その頃の少女は、気に入らないことがあると暴力で解決するような子だったのです。

しかし、中学生の水泳大会ではまるで別人のように優雅に泳いでいたのでした。

偶然なのですが、著者は少女の里親と話すことになります。里親自身も優雅な振る舞いで、少女の才能を見出しているのでした。

子供がおかれている教育環境の重要性と同時に、幸せに暮らしている少女の姿に胸打たれる思いがしました。

人として

著者と息子さんは、夏休みには日本に滞在するのですが、息子さんは日本語ができない。日本に住んでいるじいちゃんは英語ができない。

そんななか言葉がわからなくても通じあっている、じいちゃんと孫の姿には、読んでいて面白かったです。二人とも遠慮無く自分の言葉で話すのですが、なんとなく伝わっている。

伝えようとする気持ちが通じ合ったんでしょうね。

また、イギリスでは草の根運動的な助け合いの精神が強く、人助けをする人たちの思いがみなぎっていると感じました。同時に公的な支援を十分に受けることができない現状は、はがゆい思いがします。

さいごに

人種・貧困・性別など様々な社会問題を考える機会を与えてくれる一冊でした。

また、子供の成長というのは未来に希望が持てて良い物だなあ、と思いました。

そういえば、ミュージカルの「マイ・フェア・レディ」でも上流下流の階級差が著しいと感じたが、この本を読んで腑に落ちた気がした。

日本はまだまだ社会的に平等なのかもしれない…。

ともかく、より良く生きようと思った。

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